新人研修のグループワークで言葉が発せない

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楽しい大学生活を終えた僕は、無事にIT企業に就職し、入社式を終え、そして始まったのが大阪での新入社員研修でした。この時期はまだ研修だったので楽でしたが、「あれ?僕おかしくない?」と自分自身でさえ気づく違和感にたびたび遭遇しました。今日は、そんな話の一つ目です。

働くことへの不安が大きくなった新入社員研修1ヶ月目

当時(2009年)の就職活動は売り手市場で、就職に困る人はあまりいませんでした。僕もその1人であり、数社から内定をもらい、その中から東証一部上場のIT企業に就職。いわゆるシステムエンジニアとか、SEとか言われる職業です。

僕はバリバリの社会科学系の私立文系大学出身でしたが、パソコンについては他の人よりも詳しいと思っていたし、サークルのホームページを管理したり自分のホームページを作ったりしていたので、きっとシステムエンジニアは僕に合っているはずと思いこの業界を選びました。

その最初に行われた新入社員研修では前半の1ヶ月くらいはずっと座学。講師がプログラミングなどの講義したり、1人1台渡されているパソコンでプログラミングの課題をやったり、ずっとそんな感じで特に難しいものはなく、どちらかというと簡単でした。

それでも、他の新人と比べると、僕の実力は中の下くらいで、やっぱり情報系や工学系の出身者には敵わないませんでした。そんな環境だったので「簡単だなぁ〜」と思いながらも、「まだ始まったばかりで、これからもっと難しい内容も学ぶんだろうし、研修終了後に配属したらもっと難しいことに出会うんだろうな。そうなった時に、自分は大丈夫だろうか?」と不安を感じたのも事実です。

結局、最初の1ヶ月の座学の内容でわからないこともなく、苦手なこともなく、たとえ上手くいかなくても時間をかければ一人で解決できていたし、「これなら、働いても大丈夫そうだ」と感じながら研修1ヶ月目が終了しました。

研修2ヶ月目はグループワーク

2ヶ月目に入ると研修はグループワークになりました。グループワークの課題は、1ヶ月目の座学で習ったことを使って、アマゾンのようなショッピングサイトを作るというものでした。

ただ、全員がこのグループワークに進めるわけではなく、講師や人事によりグループワークに進むには実力が不十分と判断された新人は、グループワークには進めず、2ヶ月目も座学(補講)を続けるという仕組みでした。

この頃に行われた新人と2年目の先輩の交流を目的とした飲み会で先輩たちが「座学(補講)は仕事に役立たないから、絶対グループワークに進むように」と言っていましたので、1ヶ月目の内容を家で復習したり、朝少しだけ予習したりなどして自分なりにグループワークに進めるように努力はしました。その甲斐あってか、研修者全体で見るとITスキルが中の下程度の僕が、グループワークに進めるということがわかった時は非常に嬉しかったものです。

でも、後々のことを考えると、グループワークではなく、座学(補講)の方がよかったのかもしれないですが。

グループワークが始まるが、ほとんど無口の初日

2ヶ月目に入りると、1グループ4人で1つのシステムを作るというグループワークが始まりました。メンバー4人の内訳は男性2名、女性2名。男性1名と女性1名が情報系の出身、そして、僕ともう1人の女性が文系出身という組み合わせ。

他のグループもだいたいこんな感じで、ちゃんと男女比や理系、文系というのを考慮してグループが組まれているので「講師や人事の人はグループ分け苦労しただろうなぁ〜」と僕はこのあとずっと苦しむ問題を抱えるとも知らずにのんきに考えていました(そして、そういうのを考慮して振り分けるのは大して難しくないですよね・・・)。

そして、「あれ?」という違和感はグループワークの初日から感じることになりました。

初日の作業では、すでに互いに知り合いだけど、メンバー同士再度自己紹介をして、スケジュールや役割分担をしたのを覚えています。そのほとんどを理系出身の2人が行い、文系出身の女の子はわからないところがあれば聞いていました。僕はというと、わからないこともなく、だからと言って話すこともなく、特に何も話さずに初日が終わりました。

研修会場からアパートに帰る地下鉄の中で、「あれ?僕、大丈夫かな?今日、全然言葉を発していないけど。いや、だって今日は始まったばかりで、特にわからなかったこともなかったし」と不安を感じましたが、自分自身を納得させて、その日を終えました。

話したい!アパートで悩む日々。

グループワークが始まって、始めの頃はわからない箇所もなく、僕は自分の作業をやって、グループ内の進捗会議で報告とかする程度でした。

ただ、この頃からすでに会話を始めるタイミングがわからないという状況になっていました。なぜなら、グループワーク初日からあまり言葉を発していなかったからです。だから、突然おしゃべりになるのも変な気がして、雑談すらしていませんでした。

でも、心の中では「もっと他の人のように雑談とかしたい」と思っていました。なので、研修が終わると、地下鉄や帰り道、アパートで、ずっとどうやって喋り出すのか?何を喋るのか?それを考え続けました。誰かがこう言ったら、僕がこう言えばいいじゃん!とか、頭の中でシミュレーションするほどでした。

ところが、グループワークになると、そんなシミュレーションは意味もなく、全く一言も発することができません。隣のグループがワイワイ雑談で盛り上がっているのを見ると「僕もあっちのグループであればきっと会話できていたに違いない。」と、隣の芝生が青く見えていました。

そして、家に帰ると、酒を飲みながら、僕が楽しく会話をしながら仕事をする様子を独り言をつぶやきながら想像するということをしていました。

 話しかけ方もわからない。

そうこうしているうちに、グループワークは佳境を迎え、かなり難しいことが多くなってきました。正直言って、1ヶ月目の座学で学んだことでは対応できそうもないほどでした。

つまり、自分だけではわからない箇所が出てき始めたのです。となると、グループメンバーに相談する必要があります。グループには情報系出身の人が2名もいますから。

でも、それができません。なぜなら、話しかけ方がわからないからです。もはやどれくらいの大きさの声を出せばいいのかもわかりません。それがわかったとしても、どうすればそれくらいの声が出るのかもわかりません。

なので、時間をかけて1人でわからないことを解決しようとしますが、すでに述べたように、座学で学んだことではとても対応ができそうにないので、時間がだらだらと過ぎていくだけでした。

そして、だらだら過ぎていく時間を使って、どうやって話しかけたらいいのかを頭の中でシミュレーションし、でも実行はできず、家に帰っても、テレビを見ていても、風呂に入っても、ずっとずっと、どうやって言葉を発したらいいのか?僕はどうすればいいのか?ということを悩むようになりました。

僕は使えない奴だったんだ

僕は、大学時代のサークルやゼミでグループワークなんて山のようにやってきたので、グループワークは得意だと思っていました。また、リーダーの役割もよくやっていたので、自分には主体性や積極性があり、また、みんなをまとめて統率する力もあると思っていました。

でも、研修でのグループワークの僕は、グループを統率してまとめることもなければ、積極的に話しかけたりもせず、得意なはずのグループワークで言葉すら発せない僕でした。

毎日のように、こう思いました。

「僕は、使えない奴だったんだ。大学時代にサークルやゼミでうまくやれていたのは、きっと周りの人が支えていたからに違いない。それを僕は勘違いして、自分ができる奴だと思っていたなんて、本当にバカだ。」

社会人になる際に僕は「社会に通用するのか?」とすごく不安を感じていましたが、研修ですらこのざまですから「通用しない」ということでしょう。僕は大きく自信を無くしました。

その後のグループワーク

結局、そのグループワークでは、その後も言葉を発することができず、グループ内の進捗会議でなんとか言葉を発するという程度でした。しかも、進捗は僕だけ悪いという状況。

僕の正面に座っていた情報系出身の女の子は、僕がわからないことがあり、それを他人に相談できないことを察してくれたのか、その子の方から「大丈夫?」「今、どこで止まってる?」などと聞いてくれました。聞かれれば、なんとか答えることができましたが、もはや何がわからないのかがわからないという状態です。

最終的に、グループは僕の仕事量を減らすということで、遅れていた進捗を取り戻し、期日であった最終日に無事に納品物を提出しました。

グループとしてはやるべきことをやったわけですが、僕はなんの達成感もありませんでした。「こんなんで、社会人として通用するわけがない。どうすればいいんだ?」という不安しかありませんでした。

そして、その後の社会人生活では、この話しかけられないという症状に苦しめられることになります。

似た症状に場面緘黙という症状がありますが、当時の僕はそんな症状の名前も知らなかったですし、僕は医師ではないので場面緘黙であったのかは不明です。